浦メシ屋奇談

音楽、特にスイング・ジャズのこと、落語など笑いのこと、あるいは男と女のことなど、ちょっと面白いことなど、思い付くことをつらつらと━

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若きグレン・ミラーに会いに行く。

グレン・ミラーのナンバーを聴くと、何だかいたたまれないような切ない気分になる。
ナット・キング・コールの歌(ピアノ演奏ではなく)でも同じような気分になる。
とはいえ決してブルーなのではなくうれしくて、むしろはしゃぎたいくらいだ。

これは「浜辺の歌」や「赤とんぼ」「朧月夜」などの叙情歌を、変わることなく「いいな」と思うのに似ているような気がする。
断っておくが、これは単に懐かしがって言っていることではない。我々が音楽に求める何かに、そう、いわゆる琴線に触れる何かがあるのだと思う。

若きミュージシャンたちがグレン・ミラーに傾倒し、グレン・ミラーのナンバーだけを追求するオーケストラを結成した。
『The Miller Sounds Orchestra』(リーダー、a. sax & cla 宮本剣一)。
すでに「SWING COOL JAZZ BIG BAND」として活動はしていたのだが、本格的にグレン・ミラーサウンドに絞り込んだ姿勢を表明しようと改名をして動き出した。

その『The Miller Sounds Orchestra』としての第1回目のコンサートが、グレン・ミラー生誕地協会日本支部の主催によって、5月18日(金)渋谷で行われる。
≪Glenn Miller 108th Anniversary of Birth Lovely Concert≫(詳細後述)
The Miller Sounds Orchestra

その改名前の、「SWING COOL JAZZ BIG BAND」としての最後の演奏会を横浜みなとみらいホールで聴いてきた。(4月13日)。
正直言って驚いた。サウンドの輝きが、眩しかった。
もともとクラリネットが加わる、いわゆるグレン・ミラーのアンサンブルは、透明感がありキラキラと瞬くような美しさがある。
細かいことだがクラリネットの加わり方と、全体のバランスが今までと違い、サウンドの輝度が増したようで非常に興味深く感じた。
しかもPA(音響設備)をまったく使わない自然なアンサンブルが、ホールの最後列まで心地よく届いていた。
サックス・セクション

この辺がリーダー宮本剣一(a.sax, cla)の音の創り方と、若いメンバーのプレイの感覚なのかもしれない。
我々もいつのまにか、グレン・ミラーはこうだろうな、という既成概念で聴いており、そしてそこから外れない演奏に納得していたような気がする。
この日の彼らのグレン・ミラーを聴いて帰って、改めてグレン・ミラー自身の演奏を聴き直し、彼らのこれからに非常に興味を持った。
彼らのエネルギーを感ずる演奏に、何だかグレン・ミラーの生命力を感じた。
ご存知のように、グレン・ミラーが活躍した時間は短かった。が、しかし彼が手がけたナンバーは、我々がいつも聴いている数の何倍もある。それらを掘り起こして、どんどん聴かせて欲しい。
トロンボーン・セクション

この日のプログラム
1) In The Mood
2) Glen Island Special
3) A String of Pearls
4) Tuxedo Junction
5) Stardust
6) The Song of The Volga Boatmen
7) I Know Why (vo)
8) Stairway to The Stars (vo)
9) American Patrol
10) St. Louis Blues March
11) Pennsylvania 6-5000
12) Serenade in Blue (vo)
13) The Nearness of You
14) Anvil Chorus
15) At Last (vo)
16) Little Brown Jug
※ヴォーカルは野村佳乃子
ヴォーカル 野村佳乃子

この先、彼らのグレン・ミラーサウンドがどう変わっていくか楽しみながら聴いていきたい。

そう言った意味で5月18日(金)に、再び若きグレン・ミラー(たち)に会うのが楽しみだ。

『Glenn Miller 108th Anniversary of Birth Lovely Concert』
チラシ

演奏:The Miller Sounds Orchestra、ヴォーカル:野村佳乃子
主催:グレン・ミラー生誕地協会日本支部
○期日:5月18日(金)
○開場:18:00 ○ビュッフェスタイルの食事開始:18:15
○演奏開始:19:30(1回目演奏開始。全2回入替え無し)
○場所:渋谷シダックスビレッジ1F
  東京メインダイニング(03-5428-5031)
○料金:¥10,000(食事+1ドリンク)全120席自由
○予約・お問合せ:グレン・ミラー生誕地協会日本支部
電話、ファックス、メールでお申し込みの上、下記口座にお振込みくだ
さい。入金確認後、チケットを郵送いたします。tel03-3486-3660 
fax03-3486-3623 メール a-katsuta@cosmospace.co.jp
※土日祭日のお申込みはFAXでお願いいたします。
三井住友銀行青山支店 普通 口座番号6944781
口座名 グレン・ミラー生誕地協会日本支部

| スイング・ジャズ | 17:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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遠くを聴く‥

これもきっと歳のなせる業、とでもいうのだろうか。
大好きな音楽の、ジャズの聴き方というか、接し方が変わってきた。

つい何年か前までは、好きで好きでしょうがない、という聴き方をしていた。
だからライブでもコンサートでも、あの人の演奏を、あのメンバー編成の演奏を聴きに行く、という意識で出かけていたようだ。
ところが最近ふと、何か気分が違うことに気が付いた。あのライブを聴かなくてはとか、聴いておこう、などという前のめりの気分がないのである。
とはいえ今までのようにライブやコンサートにはやはり顔を出すのだが、気分的にはあの演奏の聴けるところへ行こう、なのである。
この微妙な違いがお分かりいただけるかいささか疑問だが…だから歳のなせる業としかいいようがないのだが━

ただいえることは、好きで好きでいた時より、気分は穏やかだが積極的に聴きにいったり、音源を求めたりしていることは確かである。
そして生演奏にしてもCDにしても、楽しむ術をやっと知ったような気がするのである。
遅い。そう相当な晩生なのである。だから改めて聴きなおしたり、味わったり、いろいろと楽しみの挑戦をしてみたいのである。
幸いにして回りに素晴らしいミュージシャンがたくさんいる。
その一人一人を思い浮かべながら、我が楽しみを極めてみたいと思う今日この頃なのである。

3月10日。「花岡詠二プレゼンツ“第12回ジミー時田メモリアル『ヘンリー矢板ディキシーブルースを歌う』”」
花岡詠二プレゼンツ 第12回ジミー時田メモリアル

今年はいつになくこの日が楽しみだった。
というのは、前述のようにこのところジャズへの接し方が変わると同時に、ニューオーリンズ・スタイルに一層魅かれるようになってきたのである。
50年ほど前、水道橋の神田川の辺の今は無き「Swing」へ通い詰め、一人何時間も聴いていたそのわけが、今分かってきたような気がするのである。
(今頃分かってきた、というのはどういうことであるか、自分でも分からない。遅い。やはり遅い。)
が、我が身の晩生への総括はまた別の機会にして、3月10日のカントリー・コンサートがいかに楽しみだったかというと━

私は取り立ててカントリーが好きではなかった。というより関心も無かった。
12年前、ジミー時田が亡くなって(2000年3月10日)、翌年からクラリネットの花岡詠二が前述表題のようなコンサートを始めた。
もともとカントリーに興味は無かったが、花岡詠二がディキシー・グループとカントリー・グループを合わせてのコンサートというのにそそられて出かけた。

これがとてつもなく面白かった。
アメリカの移民の歴史、音楽の歴史、ブルースやジャズとの接点、それにともなう広がる音楽地図…
ニューオーリンズと違う土の匂いを、懐かしさを知った。
自らジミー時田の追っかけといい、親しくお付き合いし心酔している花岡節を12年も聞かされていると、ジミー時田をそれほどは知らなくともカントリーのファンの隅っこにすっかりぶら下がってしまった。
何よりも、ヘンリー矢板の歌に参ってしまった。
ヘンリー矢板

そんなカントリーからの12年間の刺激もあったのだろうか、ここへきて私のジャズへの接し方が変わり、ニューオーリンズ・スタイルに一層魅かれるようになったのは━
こんな言い方は無いだろうが、ニューオールリンズ・ジャズもカントリーも、スローフードならぬアメリカ南部のスローミュージック的魅力なのかもしれない。

そんなこんなで、今年の「花岡詠二プレゼンツ“第12回ジミー時田メモリアル『ヘンリー焼いたディキシーブルースを歌う』”」は、いつになく味わいながら聴いた。
それにしてもいつもながら思うことだが、これだけのメンバーでのコンサートがよくぞできるものだと、感心してしまう。
まずそのメンバーをご紹介すると━
ヴォーカル ヘンリー矢板・ゲスト吉沢 紀子
F.E.ウェスターナーズ
 スチール・ギター 大江 俊幸
 リード・ギター  北農 英則
 フィドル     高野 秀臣
 ベース      小宮山 隆
 ドラム      野呂 尚史
花岡詠二ディキシーランプラーズ
 クラリネット、サックス&ピアノ 花岡 詠二
 トランペット   下間 哲
 トロンボーン   苅込 博之
ギター      佐久間 和
バンジョー    青木 研
ベース      加藤 人
ドラムス     楠堂 浩己

第1部
Your Cheatin’ Heart
Lonsome Whistle
Columbus Stockade Blues
Send Me The Pillow That You Dream On
He’ll Have To Go
Under The Double Eagle
The End Of The World
It’s A Long Way To Tipperary
Seven Lonely Days
Carry Me Back To The Lone Prairie
Vaya Con Dions
Mind You Own Business
第2部
Goody Goody
Where The Boys Are
Laid Back’n Low Key
The Dance
How ‘Bout Them Cowgirls
Dueling Banjos
She’s Gone Gone Gone
Peach Picking Time Down In Georgia
Orange Blossome Special
I’m So Lonsome I Could Cly
Mississippi Delta Blues
That’s A Plenty
Country Roads
終始懐かしさに包まれていた。
それにしてもヘンリー矢板の歌はいい…
Delta 4

ところでニューオーリンズ・スタイルで最近頓に聞き耳を立てているのが「Delta4」(クラリネット後藤雅広、ピアノ後藤千香、バンジョー青木 研、ベース小林真人)。
とはいうものの、彼ら一人一人の、あるいはほかの編成での演奏はよく知っているが、「Delta4」としての生の演奏はお恥ずかしい話だが聴いたことがない。CDだけである。
この2〜3日中には聴けるから、楽しみだ。「Delta4」については、また改めてご紹介したいと思う。

どうやら最近、少し引いて聴くことを知ったのかもしれない。そう、遠くを聴くとでもいおうか…楽しみが益々増えそうだ。

※文中、敬称を略させていただいています。
※第12回ジミー時田メモリアルの写真は友人よりの提供によるもの。

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談志が死んだ。

15〜6年前まで、私は立川談志の噺があまり好きではなかった。

六つか七つの頃から大人に混じってラジオで落語を聞いていて‥桂三木助(三代目)、三遊亭金馬(三代目)、三遊亭円歌(二代目)、三笑亭可楽(八代目)、春風亭柳橋(六代目)、春風亭柳好(三代目)、古今亭今輔(五代目)、桂文楽(八代目)、古今亭志ん生(五代目)、三遊亭円生(六代目)、柳家小さん(五代目)、柳亭痴楽(四代目)など、ラジオに噛り付いて聞いていた。
NHK以外の放送は、田舎のことでシャーシャー言うラジオでやっと聞いていたのを思い出す。

私が立川談志を知ったのはそんな頃からさらに5〜6年経ってから、真打に昇進(1963年)してからで、良く知るようになったのは日本テレビの「笑点」の司会をするようになってからだ。(1963年)
先日NHKを観ていると、あの「笑点」の司会も初代となっているが、本当は番組企画を考えた時、三遊亭円楽(六代目)を立てていたらしい。
ところがいざ開けてみたら下手糞でどうにもこうにもならないんで(さもありなん)、しょうがなく談志自身でやることになったと言うことで、正式には二代目だと自ら言っていた。

談志の何を最初に聞いたか憶えていないが、何だか小うるさい落語だな、と感じたのを憶えている。
それに握った左手の突き出た第二間接を左ひざに立てて座っている仕草や、右手の人差し指と親指だけを立てて動かす仕草と同時に首を前に突き出し口を曲げる仕草。
さらに上下の顎を少しずらして口を開き、「あー、あー!」と相槌を打ったり頷いたりする仕草‥
当初、私はこれらが気になって気になって仕方がなく、噺を聞いていられなかった。

そのうちに「落語は人間の業の肯定だ」と言う落語論を聞くにいたっては、落語はとてつもなく大変なものなのだ、と首を引っ込めそうになった。
どこかの誰かじゃないが「たかが落語でげしょ!」と、懐手に鼻歌で科を作って通り過ぎようかと思ったものだ。

大好きとはいえ、大体落語をそんな視点で眺めたことも考えたこともなかった。
三木助の「芝浜」や「へっつい幽霊」、金馬の「居酒屋」や「薮入り」、可楽の「らくだ」や「うどんや」「二番煎じ」、あるいは柳好の「野ざらし」や「青菜」、さらに文楽の「明烏」や「船徳」等々など‥ただただうまいなぁ!面白い!と喜んでいただけなのだ。(もちろん、それで良い筈だが‥)

が、演じる側は時代背景だの生活習慣だのを考え、人情だの非情だの、常識を逆手に取った残酷さなど、誰もが持っているであろう人間の裏までをあっさりと曝け出して、その手際の良さで笑わせる、工夫をしているのである。
浅はかにも初めてそんなことを考えてみて、そうかだから落語は面白いのだ、離れられないのだとおもうと同時に、やはり落語は大変なものだと改めて思ったものだ。

そんな時、談志自身が弟子に「野ざらし」の稽古をつけているCDを聴いた(「談志の世界」。
これは面白かった。普通なら、師匠が弟子に稽古をつけているところなどに立ち会えるわけがないのだが、これはいろいろな意味で噺家でもない我々のためにもなった。
このCDを聴いて、多少大げさに言えば、落語が自分の人生に如何に役立っているかと言うことに気が付いたのである。

何でも無いような一言でも、キーになる言葉と言うのがある。
「野ざらし」の中の━
夕べとなりの隠居のところへ訊ねてきていた女が、実はこの世のものではなかったと八っつぁんが知るところで━「あんないい女ならおば(お化け)でも、ゆうた(幽霊)でも━」と言う。
このくだりを調子よくつらつらとやっておいて、突然「こう言う言葉は残しておけよ!」とポンと言っておいて、サッサと次へ行ってしまった。
これは、その前にも熟語(忘れられていく言葉)に対する配慮をしなさい、と言っているが、いかにもこう言う表現は落語のセンスとして残していくべきだ、と言っているような気がした。
ちなみに柳好(三代目)はここは「ゆうてき」と言っている。

それから「野ざらし」の聞かせ場の一つに、釣りをしていた隠居がまったく釣れないので帰ろうと糸・竿を仕舞っていると、金龍山浅草寺で打ち出だす暮れ六つの鐘(柳好だと、多門寺入会の鐘)が陰に籠もって物凄くボーンと鳴ったなぁ━
「四方の山々雪溶けかけて、水かさ増さる大川の、上潮南に岸を洗う水の音がザブーリ、ザブリ‥」とのやはり名調子のくだりがあるが、ここで談志は━
「これ、春と夏が一緒んなっていて可笑しいんだ。可笑しいんだけど昔からこうやってるんだからこれはこれでいい、と言うんならこのままやればいいし、可笑しいと思えばやめればいい。」
つまり自分の噺として、どんなことでも自分の中でちゃんと筋を通してやれ、と言うことらしい。
なるほど、師匠の噺を口移しで教わり、そのまんまをやるとは思わないが、例えちょっとした一言でも諸々を考えた上でしゃべると、噺の奥行きや味わいが違ってくるのに違いない。面白いものだと思った。

この人はやっぱり凄い人なんだろうなと思い始めたのは、十数年前になるか「鉄拐」を聞いたときだと思う。
断っておくが、私が聞いた「鉄拐」は名演と評判の高座(2007年)のものではなく、もっと前のものである。
その時、こんな地味な噺をじっくりとやる談志と言う噺家はなんなんだろう、と思ったものだ。
もっと面白い得意な噺がいっぱいあるんだからそれをやればいいのに、ここに立ち会った客はついてないナ、などと思いながらいつの間にか引き込まれていったのを憶えている。
その時は、以前気なって仕方がなかった仕草のあれこれがまったく気にならなかった。というより、そんな仕草をしていたのかどうかも憶えていない。

落語は面白いことを言うから面白いのではなく、その噺家のセンスが面白いのである。
志ん生がやったくすぐりを志ん朝がやっても、さほど可笑しくなかったことがある。親子とはいえ、志ん生にはあっても志ん朝にはそのくすぐりのセンスが無かったのだと思う。
落語はそのそれぞれのセンスで噺を、言葉を裁く手際の良さが可笑しいのだろう、とその時の談志の「鉄拐」を聞いていて思ったものだ。

そういえば、前述のCDの「談志の世界」の中に、池袋演芸場での漫談が入っている。
その中に━
「昨日、3時間も『芝浜』をやったら、声がこんなんなっちゃった。喉が弱くて━医者に言わせると20パーセントぐらい喉頭がんになる可能性を持っている、と言われた━」と言っている。
この頃から喉はあまり良くなかったのだろうか。入院するのはそれからまだズーッと後のことだが━

古今亭志ん朝が亡くなった時は、あのとんとんとんとん、と調子で話す噺が年をとったらどうなるのか確かめられなくなったのが残念だったが、仕方がないと諦めた。
立川談志がいなくなった今は、ただただ、もっともっと聞いておけば良かった、と日が経つにつれて残念に思うこと仕切りである。

それと浪曲や漫談などのお笑いと寄席芸、いやお笑いに限らずフレッド・アステアなど海の向こうの芸やジャズなどの博識さと分析の面白さ‥やはり持ってっちゃったんだろうね、向こうへ。ああ、もったいない‥。

※敬愛の念を込めて、敢えて敬称は略させていただいています。

| 雑感 | 09:11 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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Swingin'の力

「What A Wonderful World」
いささか大げさに言えば、客席とステージがまさに一つになった、和気あいあいとしたいいライブだった。

『Swingin’ (2nd)』ライブ(2011年12月6日)。
半年前の一回目にも意図したことだが、会場(東京メインダイニング)が渋谷の繁華街の1階にあるだけにジャズ・ファンに限らず、いわゆる音楽好きな特に女性客に期待し、新しいジャズ・シーンを描いて全体の構成を考えた。
大体ジャズ・ライブと言うと狭い階段を上がるか、地下に下りるかの小さなスペースで肩を寄せ合って聴くというのが大方だった。
その点、ここ東京メインダイニングでのライブはゆったりとしていて明るく、ステージの作りなどもちょっとしたシアター・レストランとでも呼びたくなるような雰囲気である。
Swingin' Quartet

新しいジャズ・シーンというほどではないが、普通の音楽好きの人が普通に楽しめるジャズ・ライブにならないだろうかとかねがね思っていたものだから、この2回のライブは会場のロケーションも含めていい挑戦だった。
どうしてもジャズというとかつてのモダン・ジャズや、さらに過激なフリー・ジャズなどを思い描くらしく、どうしても構えてしまう人が多く、マニアックな音楽としてなかなか近づいてくれなかった。
どうやら小うるさい音楽と誤解されていたらしい。
鈴木直樹

スイング・ジャズというのはいわばアメリカの歌謡曲のようなもので、流行り歌でも映画音楽でも、あるいはミュージカルでも童謡でも、オリジナルの曲の良さを損なうことなくスイング(スタイル)して楽しむ━いわゆるクールなのである。
それをジャズに馴染みのない人たちにも体感してもらおうというのがこのライブの狙いであり、その手ごたえを得ることができたということである。

演奏も次から次へと一方的にやるのではなく、分かりやすいテーマを立ててそのテーマの下にかつて聴いたことのある、知っているナンバーを中心に展開する━
今回は師走でもあり、いろいろあったこの一年を少しでも穏やかに締めくくりたいという願いを込めてテーマを「この素晴らしき世界(What A Wonderful World)」として、世界の国々のお馴染みのナンバーを探りながらスイングしてみた。
宅間善之

前以てのチラシにもそんなナンバーをプログラムの一部として紹介し、お客さんにも大体の様子が想像できるようにしておいた。
そんな準備が効いたのかどうかは分からないが、演奏が始まった時から緩やかな空気が客席から伝わってきて、とてもいい気分になれたのである。

その上にリーダーの鈴木直樹(Cla)のMCが卑近で、ちょっとしゃべり過ぎのきらいはあったが良かった。
終始笑いが起こり、楽しいジャズ・ライブになった。
メンバーは前回(6月)同様前述の鈴木直樹に、バンジョーの青木 研、ビブラホーンの宅間善之、それに今回はベースにポップスにも明るいベテランの田野重松というカルテットである。

そして今回は冒頭のようなことから、あまりジャズに慣れていない女性たちのために、どうしても聴いてほしいナンバーを選んで臨んだ。
まずは「Memories Of You」(あなたの思い出)。
これはもう、ベニー・グッドマンの十八番のナンバーとしてお馴染み。映画「ベニー・グッドマン物語」の中では、ベニー・グッドマン(スティーヴ・アレン)がカーネギー・ホールのステージでこの「Memories Of You」の演奏を始めると、客席にいた恋人(ドナ・リード)が「今、彼はプロポーズしている…」と言う名場面があるが…けだし名曲である。
またもいささか大げさに言えば、私は高校生時代ベニー・グッドマンのこの曲で恋のときめきとともに、いても立ってもいられない切なさを教えてもらったように思う。
鈴木直樹のクラリネットは透明感を帯びて優しくなってきた。だからこういう曲をやると、このまま終わらないでほしい‥という思いとともに聴き入ることが多い。
このときの宅間善之のビブラホーンは、いわゆるスイング調でないところがまたよかった。

そして「Dark Eyes」(黒い瞳)。
ルイ・アームストロングのトランペットと名唱で知られる、お馴染みのロシア民謡である。
鈴木直樹のカーブド・ソプラノ・サックスはこの曲の持っている哀愁を存分に引き出し味わい深く、昔から私は好きでよく聴いていた。
この手の編成のコンボは曲想を大事に出してくるから、とくにバンジョーは難しいと思う。
前述の「Memories Of You」のような情感たっぷりのような曲があったかと思うと、この「Dark Eyes」のようにテンポもスイング感もあるが、一方民謡としての愁いもある。
そんな絶妙な味わいを青木 研のバンジョーは的確に出してくる。曲によって表情が違うのである。これはテクニックはもちろんだが、そのテクニックを超えたその曲に対する確かな想いがあるのだと思う。まさしく彼は、若くしてバンジョーの山、天下の研、である。
青木 研

そんな思いをつくづくさせられたのが、「アルハンブラーの思い出」である。
ギターでも高度なトレモロ奏法の技術が必要な難曲である。それをバンジョーで弾くなど‥考えられない。が、またこのバンジョー一本での「アルハンブラーの思い出」が心を打つ。
ここにも超高度なテクニックとともに、曲に対する計り知れない想いがあるのだろうと思う。
いつかその、青木 研の音楽に対する思いをじっくりと聞いてみたいと思う。
それはさておき、この青木 研の「アルハンブラーの思い出」も是非聴いてほしい一曲だったのである。

そしてもう一曲、「Danny Boy」(ダニーボーイ)。
これこそ誰もが良く知るお馴染みのナンバーといえよう。古くはハリー・ベラホンテのカーネギー・ホールでの名唱、演奏ではサム・テイラーやシル・オースチンのテナーでお馴染みだが、鈴木直樹のカーブド・ソプラノ・サックスでの「Danny Boy」も実に優しくていい。
またここでも宅間善之のビブラホーンに合わせる青木 研のバンジョーがやるせなくいい。

このライブに来てくれていた女性の方が━
「ジャズって恋の音楽なんですね。
聴いてるうちに、20代の頃の好きな人のことで喜んだり苦しんだり、切なくなったりしたことを想い出して、懐かしくなったのと同時に何だかうれしくなりました‥」
「大雨の中、かけつけましたが、とっても楽しいライブでした!
どの曲も、楽しくて、暖かくて、優しくて、ずっと、体がスイングしていました。
帰りには、雨も上がり、足取り軽く帰宅しました。三回目も楽しみにしています」
田野重松

うれしいことです。
こんな感想がどんどん聞かれるようになり、もっともっとあちこちで演奏できるようになるといいのですが━
さあ、三回目の企画でも立てようか━

『Swingin’ (2nd)』
1set
1) When You’re Smiling
2) Memories Of You
3) Dark Eyes
4) アルハンブラの思い出
5) Fly Me To The Moon
6) 月の砂漠
2set
1) Back Home Again In Indiana
2) Tennessee Waltz
3) Theme Of Vagabond(蒲田行進曲)
4) 鈴懸の径
5) As Time Goes By
6) That’s A Plenty
7) Danny Boy
8) When The Saints Go Marching In
9) 見上げてごらん夜の星を

クラリネット(カーブド・ソプラノ・サックス)鈴木直樹
バンジョー 青木 研
ビブラホーン 宅間義之
バース 田野重松

※敬称は略させていただいています。

| ライブ | 17:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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堀越 彰の音楽圧、「カルチェ・ラタン」。

半年前の6月のある日、演奏旅行での立ち寄り先バース(オーストラリア)から、ドラマーの堀越 彰からメールが入った。
そこには彼の昨年末の『狂詩曲 rhapsody』(「衝撃のコンサート」)につづいての11月博品館公演『Quartier Latin』(カルチェ・ラタン)の、冒頭シーンのコンテ(設定・展開プラン)がビッシリと書いてあった。

前提の説明など何もなく、いきなりパリのカルチェラタンの片隅の酒場でのシーンの描写である。が、私は何の戸惑いもなく、彼のコンテに添ってそのドラマチックな世界に突入していった。
昔居た広告の世界の虫が動き出し、読みながら思わずカット割り(映像化する時のカメラの動きと、画面構成)をしていた。
しかしこれは私の昔の仕事柄、こういう形でのめりこんでいったわけではない。

11月9日、『Quartier Latin』公演の当日、私は前以て誘った、たまたま女性ばかりの友人8人と、博品館で落ち合った。
私は彼女らを誘うのにチラシを見せ、面白いから観にいってご覧!としか言わなかった。というより、そうとしか言いようがなかった。
冒頭シーンのコンテを垣間見せてはもらったが、それがどういう構成の元にどうステージにされるのか知る由もなく、また昨年公演の「狂詩曲 rhapsody」の説明をしながら堀越 彰の世界を説いても、私のコトバでは陳腐になりそうでとても彼の表現しようとした域にまでは届きそうにない。
だからチラシを見せて黙っていると、全員が行きたい!と即返してきた。
Qualtier Latin

ラテンとヨーロッパが交錯するパリ、カルチェ・ラタンの片隅。
薄暗い酒場、喧騒の中でシャンソンを爪弾くギターリスト。
やがてそのギターはあたかも暗闇の中で目覚めた怪物か何かのように激しくなり、椅子代わりの箱を打ち鳴らすパーカッショニストとともに、もう一人のギターリストを呼び込み怒涛のような合奏となる‥

冒頭のメールの件同様、堀越 彰という男はあまり前以てくどくどと説明することを好まないのだろう。
いきなり我々の予測し得ない世界へ引きずり込んでいく。かなり暴力的にである。
しかし暴力的とはいえ、引きずり込まれた我々はすぐに納得させられるから並ではない。
納得させられるどころか、その先を恐々ながら探ってみたくなる冒険心を煽りながら次から次へと展開してくるから、昨年同様まったく休憩なしの1時間半が瞬く間に終わってしまった。

初めて堀越 彰の世界を体験した、私の知り合いの女性たちも芝居仕立てのトップシーンで度肝を抜かれたことだろう。
実は私は彼女たちを誘うのに、コンサートとは一言も言わなかったのである。

ステージ上に配されたミュージシャンが開演と同時に演奏し、MCが入って演奏が繰り返される。そして休憩が入り、2部が始まりやがてフィナーレになる━そういういわゆるコンサートとは一線を画すために、あえてコンサートとは言わなかったのである。
つまりいわゆる従来のコンサートという概念にはおよそ入らないと思ったからである。
かといってどういう概念の範疇のものであるかは、私の乏しい知識では思い当たるものがなかった。
というより、昨年の公演で「そうか、音楽もこういう表現方法があるのか!」と教えてもらったのである。

前述の女性たちも、コンサートとは言われていないまでにもいわゆるコンサート(音楽会)だと思い込んでいて、当然いつものコンサートの段取りでことは運ぶであろうと待ち構えていたはずである。
ところがさにあらず、いきなり芝居仕立てでステージは開いた。
そして次々とドラマチックに繰り広げられるラテンのリズムと歌、そして官能的な踊り(フラメンコ)。
初っ端の驚愕は即興味へと変わり、次にどんな音楽体験をさせてくれるのかと好奇心を呼び起こし、いつの間にかドキドキしながら前のめりになって堀越 彰の世界を探検していた。
そう、これはまさに探検である。異様ともいえるほどの高密度な空気の中を、我々は息を呑む思いを繰り返しながら次の演奏は、次の踊りはといつの間にか首を前に突き出すようにして進んでいった。

そんな高密度な空気を創り上げているのが、6人のプレイヤーである。
AMI鎌田厚子(Baile フラメンコ・ダンス)、堀越 彰(ドラムス、パーカッション)、石塚孝光(Cante フラメンコ歌手)、片桐勝彦(ギター)、林 正樹(ピアノ)、白土庸介(ギター、ベース)。

今書いていて気が付いたのだが‥普通コンサートと言うのは演奏する側がいて、聴く側がいる‥つまり我々聴く側は、演奏する側、つまりプレイヤーの演奏を待って味わい楽しむものである。
ところがこの『Quartier Latin』にしても、昨年の『狂詩曲 rhapsody』にしても、我々は聴く側にいる意識とは違う何かがある。
ちょっとオーバーに言えば、音楽が、踊りがステージから放たれた瞬間に我々聴(観)衆は共有してしまう━空中に放たれて、我々の眼に耳に届くまでの僅かな時間とはいえ多少なりとも減衰したものを鑑賞するのではなく、プレイヤーが発する音楽圧そのものを受けとっているのであろうと思う。
だからプレイヤーが発揮する探究心や創造力、情熱、さらには彼らが張り巡らせている緊張感までをもそのまま受け取り、プレイヤーと一緒に音楽をやっているのである。
そうだ、そんな感覚が探検であり、受け身で聴くだけではない前のめりになって、コンサートに参加している感覚なのであろう。
これは彼らだからこその、独特の音楽圧を備えたミュージシャンのなせる業といえよう。

改めて思う。音楽もこういう表現方法があるのだ、と━
しかしこれは技法の問題ではなく、音楽そのものに、コンサートそのものに対してしっかりとしたコンセプトを持っているかということになるのだろう。
そのコンセプトに沿ってどうあるべきか、あるいはどうやろうかと考え、組み立てるのだと思う。

いずれにしても音楽の可能性と面白さを改めて思う。
これからの堀越 彰の世界が、大いに楽しみである。

※敬称は略させていただいています。

●『Swingin’ (2nd)〜この素晴らしき世界 in 渋谷』(浦山隆男プロデュース)
期 日:12月6日(火) 
open 18:30(ビュッフェスタイル食事スタート)
start 19:30 (2回、入れ替え無し)
場 所:渋谷シダックスビレッジ1F 東京メインダイニング(03-5428-5031)
チャージ:\5,500(Mチャージ+ビュッフェスタイル食事+1ドリンク)
予 約:東京メインダイニング tel.03-5428-5031
    Swing Ace tel 03-6768-8772 fax 03-6768-8773 e-mail ticket@swingace.com
    Wonder Jazzland e-mail wonder@jazzland.jp

●『鈴木直樹(cla) + 大橋高志(pf)デュオ』(浦山隆男プロデュース)
期 日:11月29日(火)
    open 19:00 start 19:30〜 2回(入れ替えなし)
場 所:西荻窪「ミントンハウス
予 約:ミントンハウス03-5370-4050
チャージ:\2,500(飲食別)

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