スイングの波
この前、生のサウンドを聴いたのはいつだったろうか‥
4月26日に「鈴木正男& SWING TIMES」を聴いて以来だから、ほぼ一月余。コンボは4月14日に「Swingin’ at The Dickens」でディキシーを楽しんで以来だから、やはりほぼ一月半ぶり。
先日、南青山のMANDALAの鈴木直樹のライブ・コンサートに行ってきた。
鈴木直樹とは1月31日のミントンハウス以来だから、4ヶ月ぶり。そうか、彼とはそんなに顔を合わせていなかったんだ。ましてや演奏も聴いていなかったから、何だかやたら感激した。
3月11日の東日本大震災で、やはりいろいろが狂ってしまった。

ただこの感激は単に久し振りだけではなかった。メンバーがいい。
クラリネットにカーブド・ソプラノサックスが鈴木直樹。バンジョー、青木 研。ピアノ、江草啓太。ベース、ジャンボ小野。そしてドラムス、堀越 彰。まさに役者ぞろいだ。
悪かろうはずがない。随所にそれぞれの役者の聴かせどころがあって、面白かった。
この日の演奏の特徴としては、日本の曲が多かったこと。それも民謡や民謡に近い歌謡曲など。
「鈴懸の径」(鈴木直樹編曲、ラテンバージョン)、「見上げてごらん夜の星を」、「東京音頭」、「さくらさくら」、「与作」、「阿波踊り」。この曲目だけを見ると、およそスイング・ジャズのライブ・コンサートとは思えない。
鈴木直樹も言っていた。こういうジャンルにこだわらないところから音楽の面白さ、これからのジャズのいくえを探ってみたい、と━。
もともとのスイングの良さをしっかりと守ることも大切だが、時代の中でどんな可能性があるかを、スイングの波を探ることも、音楽家として大事なことだろう。

そういう意味では、「東京音頭」でみせた青木 研の津軽三味線張りの引き回しは見事だった。バンジョーであの太棹の撥を叩きつけるような、また三味線独特のトリルのような小回りをきかせた弾き方など、エキサイティングな演奏はまさに驚天動地。津軽三味線ならぬ、津軽バンジョーというのだそうだ(?)。
鈴木直樹も言っていたが、何で東京音頭で津軽三味線だ!という感はあるが‥それにしても見事だった。
青木 研で言えば、「世界は日の出を待っている」は何回聴いてもため息が出る。惚れ惚れする。
私は彼を「若くしてバンジョー(万丈)の山、天下のケン(険)こと、バンジョーは青木 研!」と紹介する。

ドラムスの堀越 彰もまたある意味異質な、奥の深いドラマーである。
私は彼には2005年の愛知万博のコンサートで付き合っていただいたのが初めてで、その後鈴木直樹のライブでの彼を、あるいは異色民謡歌手伊藤多喜雄での演奏を聴くくらいだった。
そして昨年暮れの博品館劇場での「狂詩曲 rhapsody」を聴いて衝撃を受けたことを、ここでの昨年末の「衝撃のコンサート」に書いた。
それを読んでもらえば、彼の奥行きの深さを少しは分かってもらえるに違いない。
余談だが、その原稿を堀越 彰が読み、自身のサイト内での特集「狂詩曲 rhapsody」に使わせてほしいとの依頼があり、私は喜んで承諾をした。
そのサイトの質の高さを見ても、彼の真摯さが窺える。一度堀越 彰のサイトを訪れてみてほしい。そしてチャンスがあったら、是非その演奏を聴いてほしい。

ピアノの江草啓太もユニークで、もっともっと聴いて見たいピアニストだ。
お父さん(江草啓介)はお馴染みのピアニストで、我々も昔からよく聴いているが、息子の江草啓太は鈴木直樹の先輩ということで、時々一緒にやるときに聴いて注目していた。
どこか飄々としていて、魅力がある。もっともっと聴いてみたい。
今、加藤登紀子のグループで演奏することも多いという。

ベースのジャンボ小野は、名器ガスパロ・ダサーロを抱くベテランで、フロントで自由闊達に活動する若きプレイヤーたちをしっかりと支えている。
今回のライブでもかなり硬派なソロで引き締めていた。
そういえば、いつも鈴木直樹の父親の鈴木正男(SWING TIMES)のライブ・コンサートに顔を出すグレン・ミラー生誕地協会の青木秀臣氏が聴きに来ていて、えらく感激していた。
そして来年のアイオワ州クラリンダでの「グレン・ミラー フェスティバル」に鈴木直樹と青木 研、それにジャンボ小野を連れていきたい、と言っていた。実現すると面白そうだ。
今年は来週月曜日(6月6日)にクラリンダへ向けて出発するそうだ。

第1部
鈴懸の径(ラテン)
The World Is Waiting For The Sunrise(世界は日の出を待っている)
Amazing Grace(アメージング・グレース)
It’s A Sin To Tell A Lie(嘘は罪)
After You’ve Gone(君去りし後)
Memories Of You(あなたの想い出)
My Favorite Things(マイ・フェバリット・シングス)
さくら さくら
第2部
与作
阿波踊り
Morning Breeze(畠山洋美作曲)
弔いの鐘(堀越 彰作曲)
見上げてごらん夜の星を
東京音頭
Song Of The Vagabond(蒲田行進曲)
Send In The Crowns(悲しみのクラウン)
Sing, Sing, Sing(シング、シング、シング)
(encore)
Danny Boy(ダニー・ボーイ)
前にも言ったがこうして曲目をみただけでも、スイング・ジャズのライブ・コンサートにはとても思えない。
しかし終わってみてまったく違和感を感じなかった。昨日ドラムスの堀越 彰からメールが来て、バラエティに富んでいてあのブループは面白い、と言っていた。
確かにジャズの面白さと可能性を図る興味が大いにある。これからが楽しみである。
演奏曲の説明を少ししておくと━
「Morning Breeze」はフルート奏者である鈴木直樹の奥方 畠山洋美がTV局のモーニングショーのテーマに書いた曲だそうだ。まさに爽やかな朝の風を思わせるいい曲だ。
また「弔いの鐘」はドラマーの堀越 彰の作品。彼らしいコンセプチュアルな作品である。彼の作品はまだあるだろうから、もっと聴いてみたいものだ。
「Song Of The Vagabonds」は、1920年代のオペレッタ「The Vagabond King」(作曲ルドルフ・フリムル)の中の「Song Of The Vagabonds」のことである。
実はこの曲は、1982年に公開された映画「蒲田行進曲」(監督 深作欣二、制作 角川春樹、脚本 つかこうへい、出演 松阪慶子、風間杜夫、平田 満)に使われている、あの曲なのである。
ジャズの世界ではクラリネットもサックスも名人のボブ・ウィルバーがカーブド・ソプラノサックスで吹いていた。
それを聴いて刺激されたのだろう。20年ほど前に鈴木直樹もカーブド・ソプラノサックスを手に入れ、この曲を盛んに吹いていた。
その辺りから、あの忘れられていたカーブド・ソプラノサックスの音色の柔らかさと可愛らしさで、ジャズ界にも吹くプレイヤーが増えてきたように思う。
「Send In The Crowns」はベニー・グッドマンがピアノをバックに哀愁たっぷりに吹くお馴染みの曲。
鈴木直樹の父親の「鈴木正男 & SWING TIMES」ではブラス陣を少し休ませ、間を作るために鈴木正男のクラリネットとピアノだけでしんみりと聴かせる。
鈴木直樹も、親父のバンドでは吹かせてもらえないからここで吹きます!と冗談で笑わせながら、じっくりと聴かせた。
このメンバーからドラムスを抜いて、ピアノをヴァイブラホーンを代えたカルテットが、6月24日(金)の渋谷でのライブ・コンサート「Swingin’ 見上げてごらん夜の星を━in 渋谷」(前々項)である。
是非、楽しみに来ていただきたい。
※敬称は略させていただきました。
4月26日に「鈴木正男& SWING TIMES」を聴いて以来だから、ほぼ一月余。コンボは4月14日に「Swingin’ at The Dickens」でディキシーを楽しんで以来だから、やはりほぼ一月半ぶり。
先日、南青山のMANDALAの鈴木直樹のライブ・コンサートに行ってきた。
鈴木直樹とは1月31日のミントンハウス以来だから、4ヶ月ぶり。そうか、彼とはそんなに顔を合わせていなかったんだ。ましてや演奏も聴いていなかったから、何だかやたら感激した。
3月11日の東日本大震災で、やはりいろいろが狂ってしまった。

ただこの感激は単に久し振りだけではなかった。メンバーがいい。
クラリネットにカーブド・ソプラノサックスが鈴木直樹。バンジョー、青木 研。ピアノ、江草啓太。ベース、ジャンボ小野。そしてドラムス、堀越 彰。まさに役者ぞろいだ。
悪かろうはずがない。随所にそれぞれの役者の聴かせどころがあって、面白かった。
この日の演奏の特徴としては、日本の曲が多かったこと。それも民謡や民謡に近い歌謡曲など。
「鈴懸の径」(鈴木直樹編曲、ラテンバージョン)、「見上げてごらん夜の星を」、「東京音頭」、「さくらさくら」、「与作」、「阿波踊り」。この曲目だけを見ると、およそスイング・ジャズのライブ・コンサートとは思えない。
鈴木直樹も言っていた。こういうジャンルにこだわらないところから音楽の面白さ、これからのジャズのいくえを探ってみたい、と━。
もともとのスイングの良さをしっかりと守ることも大切だが、時代の中でどんな可能性があるかを、スイングの波を探ることも、音楽家として大事なことだろう。

そういう意味では、「東京音頭」でみせた青木 研の津軽三味線張りの引き回しは見事だった。バンジョーであの太棹の撥を叩きつけるような、また三味線独特のトリルのような小回りをきかせた弾き方など、エキサイティングな演奏はまさに驚天動地。津軽三味線ならぬ、津軽バンジョーというのだそうだ(?)。
鈴木直樹も言っていたが、何で東京音頭で津軽三味線だ!という感はあるが‥それにしても見事だった。
青木 研で言えば、「世界は日の出を待っている」は何回聴いてもため息が出る。惚れ惚れする。
私は彼を「若くしてバンジョー(万丈)の山、天下のケン(険)こと、バンジョーは青木 研!」と紹介する。

ドラムスの堀越 彰もまたある意味異質な、奥の深いドラマーである。
私は彼には2005年の愛知万博のコンサートで付き合っていただいたのが初めてで、その後鈴木直樹のライブでの彼を、あるいは異色民謡歌手伊藤多喜雄での演奏を聴くくらいだった。
そして昨年暮れの博品館劇場での「狂詩曲 rhapsody」を聴いて衝撃を受けたことを、ここでの昨年末の「衝撃のコンサート」に書いた。
それを読んでもらえば、彼の奥行きの深さを少しは分かってもらえるに違いない。
余談だが、その原稿を堀越 彰が読み、自身のサイト内での特集「狂詩曲 rhapsody」に使わせてほしいとの依頼があり、私は喜んで承諾をした。
そのサイトの質の高さを見ても、彼の真摯さが窺える。一度堀越 彰のサイトを訪れてみてほしい。そしてチャンスがあったら、是非その演奏を聴いてほしい。

ピアノの江草啓太もユニークで、もっともっと聴いて見たいピアニストだ。
お父さん(江草啓介)はお馴染みのピアニストで、我々も昔からよく聴いているが、息子の江草啓太は鈴木直樹の先輩ということで、時々一緒にやるときに聴いて注目していた。
どこか飄々としていて、魅力がある。もっともっと聴いてみたい。
今、加藤登紀子のグループで演奏することも多いという。

ベースのジャンボ小野は、名器ガスパロ・ダサーロを抱くベテランで、フロントで自由闊達に活動する若きプレイヤーたちをしっかりと支えている。
今回のライブでもかなり硬派なソロで引き締めていた。
そういえば、いつも鈴木直樹の父親の鈴木正男(SWING TIMES)のライブ・コンサートに顔を出すグレン・ミラー生誕地協会の青木秀臣氏が聴きに来ていて、えらく感激していた。
そして来年のアイオワ州クラリンダでの「グレン・ミラー フェスティバル」に鈴木直樹と青木 研、それにジャンボ小野を連れていきたい、と言っていた。実現すると面白そうだ。
今年は来週月曜日(6月6日)にクラリンダへ向けて出発するそうだ。

第1部
鈴懸の径(ラテン)
The World Is Waiting For The Sunrise(世界は日の出を待っている)
Amazing Grace(アメージング・グレース)
It’s A Sin To Tell A Lie(嘘は罪)
After You’ve Gone(君去りし後)
Memories Of You(あなたの想い出)
My Favorite Things(マイ・フェバリット・シングス)
さくら さくら
第2部
与作
阿波踊り
Morning Breeze(畠山洋美作曲)
弔いの鐘(堀越 彰作曲)
見上げてごらん夜の星を
東京音頭
Song Of The Vagabond(蒲田行進曲)
Send In The Crowns(悲しみのクラウン)
Sing, Sing, Sing(シング、シング、シング)
(encore)
Danny Boy(ダニー・ボーイ)
前にも言ったがこうして曲目をみただけでも、スイング・ジャズのライブ・コンサートにはとても思えない。
しかし終わってみてまったく違和感を感じなかった。昨日ドラムスの堀越 彰からメールが来て、バラエティに富んでいてあのブループは面白い、と言っていた。
確かにジャズの面白さと可能性を図る興味が大いにある。これからが楽しみである。
演奏曲の説明を少ししておくと━
「Morning Breeze」はフルート奏者である鈴木直樹の奥方 畠山洋美がTV局のモーニングショーのテーマに書いた曲だそうだ。まさに爽やかな朝の風を思わせるいい曲だ。
また「弔いの鐘」はドラマーの堀越 彰の作品。彼らしいコンセプチュアルな作品である。彼の作品はまだあるだろうから、もっと聴いてみたいものだ。
「Song Of The Vagabonds」は、1920年代のオペレッタ「The Vagabond King」(作曲ルドルフ・フリムル)の中の「Song Of The Vagabonds」のことである。
実はこの曲は、1982年に公開された映画「蒲田行進曲」(監督 深作欣二、制作 角川春樹、脚本 つかこうへい、出演 松阪慶子、風間杜夫、平田 満)に使われている、あの曲なのである。
ジャズの世界ではクラリネットもサックスも名人のボブ・ウィルバーがカーブド・ソプラノサックスで吹いていた。
それを聴いて刺激されたのだろう。20年ほど前に鈴木直樹もカーブド・ソプラノサックスを手に入れ、この曲を盛んに吹いていた。
その辺りから、あの忘れられていたカーブド・ソプラノサックスの音色の柔らかさと可愛らしさで、ジャズ界にも吹くプレイヤーが増えてきたように思う。
「Send In The Crowns」はベニー・グッドマンがピアノをバックに哀愁たっぷりに吹くお馴染みの曲。
鈴木直樹の父親の「鈴木正男 & SWING TIMES」ではブラス陣を少し休ませ、間を作るために鈴木正男のクラリネットとピアノだけでしんみりと聴かせる。
鈴木直樹も、親父のバンドでは吹かせてもらえないからここで吹きます!と冗談で笑わせながら、じっくりと聴かせた。
このメンバーからドラムスを抜いて、ピアノをヴァイブラホーンを代えたカルテットが、6月24日(金)の渋谷でのライブ・コンサート「Swingin’ 見上げてごらん夜の星を━in 渋谷」(前々項)である。
是非、楽しみに来ていただきたい。
※敬称は略させていただきました。
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