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浦メシ屋奇談

音楽のこと(特にSwing Jazz)、ミステリーのこと、映画のこと、艶っぽいこと、落語のこと等々どちらかというと古いことが多く、とりあえずその辺で一杯やりながら底を入れようか(飯を喰う)というように好事家がそれとなく寄合う処。“浦メ シ屋~っ!”

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ライブは生きている。

ジャズファンにとって、究極の望みは自分でバンドを持って、好きな時に好きな曲をナマで楽しむことである。
誰もがとは言わないが、私はそうである。ジャズファンに限らず音楽ファンだったら、聴きたいと思う時に好きな音楽を存分に聴けたら、こんな幸せなことはあるまい。

久し振りに西荻窪の「ミントンハウス」でライブをやった(8月26日)。
メンバーは6月の時と同じで、鈴木直樹のクラリネット(テナー)に山本 琢のピアノ。それにベースは小林真人。
店も手ごろで客が少なかったということもあるが、聴いている全員が自分のバンドに好きな曲を演奏させて楽しんでる、という錯覚に陥るくらい和気藹々としたいいライブだった。
mintonhouse

お好きな方はもうご存知だろうし、またネットで検索すればこのメンバーの情報は山のように出てくるだろうから分かるが、この夜のこの3人はよかった。特に小林真人のベースは、あのスラッピング・ベースの妙味を堪能させてくれた。

ベースというのはコード(和音)を提示し、4つにあるいは2つにとリズムを刻んでいるだけのものだと、簡単に思われているところが多い。
ずい分昔のことだが、まだ広告の仕事をしている時、CMソングを制作し急遽レコーディングすることになった。
そのリハーサルで、途中からピアニストが左手でベースラインを弾き出してベースとぶつかり、困ったことがあった。
実は私がメンバーを集めたのだが、他のメンバーは思い通りにブッキングできたのだが、ベースだけが急なことでスケジュールが合わず考えていたミュージシャンに来ていただくわけにはいかなかったのだ。
こんなことはミュージシャンのレベルの違いで、眼を瞑ってしまえばある意味大した問題ではない。とはいえ、ピアニストにはどうにも我慢ができなかったのだろう。
ただ私にもそれほどの音楽的な理解があったわけではなく、そんな衝突が起こるとは夢にも思わなかった。
その時私は、音楽を、ジャズというものを、さらにミュージシャンというアーティストを漠然とながら改めて知ったような気がする。またベースの腕の良し悪し、センスの良し悪しが、あまり気にできなかった演奏の良し悪しに大きく影響するものだということを、ある意味身を持って知ったのである。

さて話を先日のライブに戻すが━
あの時、そう「The Very Thought Of You」の演奏後のMCで、クラリネットの鈴木直樹が言っていた。
「何でもないベースのようでいて、後ろからシャレた音使いで、クラリネットのメロディーを彩りバックアップしてくれるのが堪らない。そして2回目のテーマの時には、さらにまた違ったフォローで演奏に広がりを持たせて楽しくしてくれる‥」と解説していた。

ジャズの楽しさは、その場で瞬間的にプレイヤー同士がそれぞれのセンスを組み合わせて、その時の演奏として創っていくことにあるように思う。
我々はその絶妙なやり取りを、その日(だけ)の演奏として楽しむのである。しかしこういうことは大分聴きなれた方でないと、決して気がつかないし、分からない。
だからこういう話は、なるほどジャズとはそういうものか、とジャズにまた一つ明るくなる。

以前に鈴木直樹と話したことがある。
ミュージシャン同士の絶妙なやり取りや、差し障りの無いエピソード、あるいは和音やリズムなど曲のつくりなど、さらには同じ演奏家、例えばベニー・グッドマンでも初期と晩年での演奏の仕方の違いなど、マニアックなファンならともかく普通のファンは知る由も無く、とはいえ興味はある。
大好きなジャズの周辺の、それも一般の我々では知りえないミュージシャンならではの話題には興味深々なのである。
だからそれとなくMCの中で、そんな話を時々して欲しい。そうすればジャズがもっと分かるようになり、興味が湧き、好きになる━と。
ここ「ミントンハウス」は、プレイヤーと聴く側が一つになって、そんな話がしやすく、またジャズの面白さを体感しやすい空気がある。だから私も大好きだ。
一度お出かけになるといいと思う。

またまた話が横道に逸れてしまった。
とにかく私のような半可通にはその凄さを正確にお伝えすることができないくらいのベーシストなのである。小林真人というベーシストは━。
その小林真人というとスラッピング・ベースである。ベースを手で叩き(slap)ながらピッチカート(弦を指で弾く奏法)で、独特のリズムをつくりながら弾く━これがまた絶にして妙なのである。
前にも書いたが、音楽のことを文章で書き表すのは、痒いところを服の上から掻く様なもどかしさがあってストレスになる。機会があったら、是非聴いて欲しい。
Naoki Suzuki in Mintonhouse

この日の演奏でベースをフューチャーした演奏は、いつもならクラリネットでうっとりとさせる「Memories Of You」をベースで。さらにファッツ・ウォーラーの名曲「Ain’t Mis behavin’」。
特に「Memories Of You」は、前にも一度聴いたことがあるが、なかなかの味わいである。ベースだけに抑えながらも、素敵な尽きない想い出がじわじわと伝わって来ていい演奏だった。(巧いもんだなぁ…)

この日はベースに限らず、琢ちゃん(山本 琢)のピアノも良かった。
お得意のスコット・ジョプリン(Scott Joplin)のラグタイム「The Easy Winner」と「Stardust」。彼の左手のストライドが聴きたくて、私もよくリクエストをするのだが、この「The Easy Winner」も良かった。ディズニーランドで良く耳にするあれである。
その他の演奏曲目は━
・It’s A Sin To Tell A lie ・Royal Garden Blues ・Shine ・I Surrender Dear ・After You’ve Gone ・Rose Room ・Danny Boy ・One O’clock Jump ・Honeysuckle Rose等。

ここ「ミントンハウス」でのライブは、私にとってこうありたいと思うライブの典型である。
ライブは演奏するミュージシャンと、聴く客が一緒に楽しめるのがいい。客にとって思わぬ収穫が得られることもある。まさにライブは生きている。特に今回のメンバーはそんな可能性に満ちていて楽しみだ。
ということで、次回のここ「ミントンハウス」でのライブもこの3人、鈴木直樹(クラリネット)、山本 琢(ピアノ)、小林真人(ベース)で10月5日(火)に組むことにした。


ところでもう一人親しくさせていただいているベーシスト根市タカオが、大腸癌の手術をして2カ月近くも仕事を休んでいた、ということを聞いた。
慌てて電話を入れてみると、3日ばかり前から少しづつ仕事をしだしたという。
40年ほど前になるだろうか、日本テレビの11PMの金曜日(司会 大橋巨泉)に、「大橋巨泉とサラブレッツ」のベーシストとして、ブラウン管で観ていた。
その後何十年かして、仕事を何回かお願いしたりしていたが、ここ数年はコンサート会場で顔を合わせるくらいだったので、病気の情報を聞いて驚いた。
が、術後は順調らしいから、安心をした。
演奏も聴きたくなった。近くコンサートにいくつもりだから楽しみだ。
クラリネット・アルトサックスの鈴木孝二、ギターの蓮見芳男、ベースの根市タカオと、立て続けに入院している。(すでに3人とも退院し、元気になっているが━)
まだまだじっくり好い演奏を聴かせてて欲しい。ファンの切なる願いである。
※敬称を略させていただいています。

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