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浦メシ屋奇談

音楽のこと(特にSwing Jazz)、ミステリーのこと、映画のこと、艶っぽいこと、落語のこと等々どちらかというと古いことが多く、とりあえずその辺で一杯やりながら底を入れようか(飯を喰う)というように好事家がそれとなく寄合う処。“浦メ シ屋~っ!”

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新ジャズ・ユニット「黒浪五人男」(?)

これは結構面白いぞ!と思った。
クラリネット(カーブド・ソプラノサックス)の鈴木直樹が中心となった、ピアノ・江草啓太、バンジョー・青木 研、ベース・ジャンボ小野、ドラムス・堀越 彰のユニットである。

5月に続いて、南青山マンダラでの彼らのライブを聴いた。
(前回のライブについては「スイングの波」)
ライブは今回で4回目になるそうだが‥私が聴き始めたのは前々回からで、当初からメンバーの個性を面白いなと思っていた。
その面白い個性が集まってのライブだから、大変興味深い演奏が楽しめた。
青木 研(bnj)   鈴木直樹(s.sax)  ジャンヴォーノ(bass)

このグループは音楽のジャンルにこだわらない、ということがコンセプトらしい。
ジャズにこだわることなく、クラシックも、ポップスも、歌謡曲も、日本の民謡も。またジャズにしてもスイングやディキシーにこだわるのではなく、モダンだって音楽として興味が持てればどんどんやろうということらしい。

そういう目でメンバーを眺めれば、理解ができる。
ピアノの江草啓太は加藤登紀子のグループと活動していたかと思えば、実験的というかやや前衛的なコンサートでその繊細なピアノセンスを発揮したり‥この日も彼のアレンジでかつて江利チエミが歌って大ヒットさせた端唄の「さのさ」(1958年)をやった。
ただこの「さのさ」に関しては、特に鈴木直樹は「さのさ」の文句(※1)も多分知らないだろう。まるで「さのさ」の気分のない「さのさ」だった。もう少し、やり込んでからを楽しみにしよう。
しかしこういう曲を書こう・やろう!というセンスと意欲は大いに買う。
江草啓太(pf)

バンジョーの青木 研は正真正銘トラッドなディキシーランド・ジャズが本舞台だが、彼がバンジョーをやろうというきっかけが、まさに奇想天外。この男の凄さの一端を物語っている。
彼がまだ子供の頃、道端に放ってあったレコードを拾ってきて聴いたそうだ。
そのレコードは、彼が生まれる30年も前に亡くなった、エノケン(榎本健一、1904~1970年)と天下を二分した歌手でボードビリアンの二村定一のものであったそうだ。
「アラビアの唄」、「私の青空」、「君恋し」などを聴いたのだろう。その歌のバックにバンジョーが入っていて、それを聴いてバンジョーに興味を持ったのが始まりだという。
この話は青木 研本人から聞いたのではなく、クラリネットの花岡詠二がライブやコンサートでよく言っているのの受け売りである。こんど本人にハッキリと確かめてみよう。
そんな青木 研だから本舞台はディキシーだがそれだけには留まらず守備範囲は広く、引き出しの数は滅法多い。だから面白い。
この日ももうお馴染みになった「The World Is Waiting For The Sunrise」では筆舌に尽くしがたい、惚れ惚れとするようなディキシーランド・ジャズのバンジョーを聴かせてくれた。
さらに「東京音頭」では、まるで太棹の津軽三味線を聴くような、津軽バンジョー(?)を聴かせてくれた。
大したものだ。これから付き合っていくのが、大いに楽しみな男だ。

ベースのジャンボ小野は、イタリア製の愛器「ガスパロ・ダサーロ」にかこつけて自らもジャンヴォーノ(ジャンボ・オノ)といい、私へのメールでも署名はジャンヴォーノと記してくる。
そのジャンヴォーノが何年か前に言っていた。
最近ジャズに限らずいろいろなジャンルの歌い手さんとの付き合いが多くなってきた、と━
そんな奥行きの深さが若い鈴木直樹らの自由な発想を支えているのだろう。このユニットには欠かせないベースである。
堀越 彰(dr)

このメンバーの中で一番異色なのはドラムスの堀越 彰であろう。
昨年12月29日の博品館劇場でのコンサート、「AMI triangulo & The WILL <狂詩曲>rhapsody」についても紹介したが(「衝撃のコンサート」)、
堀越 彰の音楽の世界はとにかくドラマチックである。
彼との会話の中でも、常にドラマタイズする工夫が聞かれる。単純にジャズ・ドラマーとくくれないところに、彼のどこに行きつくか分からないミステリアスな興味が湧いてくる。
そう、我々をある意味もてあそぶような、一つ一つ論理的に謎を解き突き進む推理小説の世界を彷徨うような知的冒険心を煽る音楽の世界である。

昨年の博品館でのコンサートの2011年版が、11月9日(水)にあるそうだ。
AMI & 堀越 彰「Quartier Latin
AMI(鎌田厚子)のフラメンコとともに、さらに芸術の域にある音楽家たちのドラマチックなコンサート・ステージである。
是非、お勧めしたい。
堀越 彰コンサート

最後に鈴木直樹は特にこの1年ほど、演奏にに輝きが出てきたように思う。
クラリネットの、カーブド・ソプラノ・サックスの音はより美しく、特に高音域の輝くような音は素晴らしい。またその音が織りなすフレーズは、以前のように成り行き的でなく歌うようになってきている。
そして最近の鈴木直樹はトラッドな世界に身を置きながらも、前述のようにポップスや日本民謡等、可能性を求め世界を広げようとしている。

以上のような5人が揃ってのこのユニット、いろんな意味で興味が持て楽しみである。
まだユニットの名前が決まっていないらしい。
そう言えば「白浪五人男」というユニークなキャラクターの歌舞伎の演目がある。
「白浪」というのは盗賊のことで、弁天小僧菊之助をはじめひとくせもふたくせもある才能ある大盗賊(?)五人組の対極にある、大善人の才能豊かなアーティスト五人組という意味で、「黒浪五人男」ならぬ「Black Wave 5 (Men)」というのはどうだろう!?
(あまり戯言を言っていると叱られそうだから、冗談はこの辺で━)

何はともあれ内在する可能性を踏まえて、ユニークなネーミングもろとも、今後の活動を大いに期待したい。
まさに、お楽しみはこれからだ!

※敬称は略させていただいています。

プログラム
第1部
My Favorite Thing(マイ・フェイバリット・シング)
Sweet Georgia Brown(スイート・ジョージア・ブラウン)
The World Is Waiting For Sunrise(世界は日の出を待っている)
Stardust(スターダスト)
Avalon(アヴァロン)
Danny Boy(ダニーボーイ)
東京音頭(鈴木直樹 編曲)
さのさ(江草啓太 編曲)
ワルツ(仮題 畠山洋美 作曲)
少年時代(鈴木直樹編曲)
第2部
鈴懸の径
After You’ve Gone(君去りし後)
与作(鈴木直樹 編曲)
弔いの鐘(堀越 彰 作曲)
見上げてごらん夜の星を(鈴木直樹 編曲)
The Song Of Vagabind (フルメンバー編 蒲田行進曲)
Sing, Sing, Sing(シング・シング・シング)
アイ・ラブ・ユー(鈴木直樹 編曲)
鈴懸の径(ラテンバージョン 鈴木直樹編曲))

※「さのさ」
作詞:三井権平 作曲:不詳 歌:江利チエミ
なんだ なんだ
なんだ ネー
あんな男の 一人や 二人
欲しくば あげましょ
のしつけて
アーラ とはいうものの
ネー あの人は初めて
あたしが ほれた人
好きなのよ 好きなのよ
とっても好きなのよ
死ぬほど好きなのよ
だけれど あたしにゃ
わからない
アーラ
それでいいのよネー
あたしだけ待ちましょう
待ちましょう 来る春を

| ライブ | 21:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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