堀越 彰の音楽圧、「カルチェ・ラタン」。
半年前の6月のある日、演奏旅行での立ち寄り先バース(オーストラリア)から、ドラマーの堀越 彰からメールが入った。
そこには彼の昨年末の『狂詩曲 rhapsody』(「衝撃のコンサート」)につづいての11月博品館公演『Quartier Latin』(カルチェ・ラタン)の、冒頭シーンのコンテ(設定・展開プラン)がビッシリと書いてあった。
前提の説明など何もなく、いきなりパリのカルチェラタンの片隅の酒場でのシーンの描写である。が、私は何の戸惑いもなく、彼のコンテに添ってそのドラマチックな世界に突入していった。
昔居た広告の世界の虫が動き出し、読みながら思わずカット割り(映像化する時のカメラの動きと、画面構成)をしていた。
しかしこれは私の昔の仕事柄、こういう形でのめりこんでいったわけではない。
11月9日、『Quartier Latin』公演の当日、私は前以て誘った、たまたま女性ばかりの友人8人と、博品館で落ち合った。
私は彼女らを誘うのにチラシを見せ、面白いから観にいってご覧!としか言わなかった。というより、そうとしか言いようがなかった。
冒頭シーンのコンテを垣間見せてはもらったが、それがどういう構成の元にどうステージにされるのか知る由もなく、また昨年公演の「狂詩曲 rhapsody」の説明をしながら堀越 彰の世界を説いても、私のコトバでは陳腐になりそうでとても彼の表現しようとした域にまでは届きそうにない。
だからチラシを見せて黙っていると、全員が行きたい!と即返してきた。

ラテンとヨーロッパが交錯するパリ、カルチェ・ラタンの片隅。
薄暗い酒場、喧騒の中でシャンソンを爪弾くギターリスト。
やがてそのギターはあたかも暗闇の中で目覚めた怪物か何かのように激しくなり、椅子代わりの箱を打ち鳴らすパーカッショニストとともに、もう一人のギターリストを呼び込み怒涛のような合奏となる‥
冒頭のメールの件同様、堀越 彰という男はあまり前以てくどくどと説明することを好まないのだろう。
いきなり我々の予測し得ない世界へ引きずり込んでいく。かなり暴力的にである。
しかし暴力的とはいえ、引きずり込まれた我々はすぐに納得させられるから並ではない。
納得させられるどころか、その先を恐々ながら探ってみたくなる冒険心を煽りながら次から次へと展開してくるから、昨年同様まったく休憩なしの1時間半が瞬く間に終わってしまった。
初めて堀越 彰の世界を体験した、私の知り合いの女性たちも芝居仕立てのトップシーンで度肝を抜かれたことだろう。
実は私は彼女たちを誘うのに、コンサートとは一言も言わなかったのである。
ステージ上に配されたミュージシャンが開演と同時に演奏し、MCが入って演奏が繰り返される。そして休憩が入り、2部が始まりやがてフィナーレになる━そういういわゆるコンサートとは一線を画すために、あえてコンサートとは言わなかったのである。
つまりいわゆる従来のコンサートという概念にはおよそ入らないと思ったからである。
かといってどういう概念の範疇のものであるかは、私の乏しい知識では思い当たるものがなかった。
というより、昨年の公演で「そうか、音楽もこういう表現方法があるのか!」と教えてもらったのである。
前述の女性たちも、コンサートとは言われていないまでにもいわゆるコンサート(音楽会)だと思い込んでいて、当然いつものコンサートの段取りでことは運ぶであろうと待ち構えていたはずである。
ところがさにあらず、いきなり芝居仕立てでステージは開いた。
そして次々とドラマチックに繰り広げられるラテンのリズムと歌、そして官能的な踊り(フラメンコ)。
初っ端の驚愕は即興味へと変わり、次にどんな音楽体験をさせてくれるのかと好奇心を呼び起こし、いつの間にかドキドキしながら前のめりになって堀越 彰の世界を探検していた。
そう、これはまさに探検である。異様ともいえるほどの高密度な空気の中を、我々は息を呑む思いを繰り返しながら次の演奏は、次の踊りはといつの間にか首を前に突き出すようにして進んでいった。
そんな高密度な空気を創り上げているのが、6人のプレイヤーである。
AMI鎌田厚子(Baile フラメンコ・ダンス)、堀越 彰(ドラムス、パーカッション)、石塚孝光(Cante フラメンコ歌手)、片桐勝彦(ギター)、林 正樹(ピアノ)、白土庸介(ギター、ベース)。
今書いていて気が付いたのだが‥普通コンサートと言うのは演奏する側がいて、聴く側がいる‥つまり我々聴く側は、演奏する側、つまりプレイヤーの演奏を待って味わい楽しむものである。
ところがこの『Quartier Latin』にしても、昨年の『狂詩曲 rhapsody』にしても、我々は聴く側にいる意識とは違う何かがある。
ちょっとオーバーに言えば、音楽が、踊りがステージから放たれた瞬間に我々聴(観)衆は共有してしまう━空中に放たれて、我々の眼に耳に届くまでの僅かな時間とはいえ多少なりとも減衰したものを鑑賞するのではなく、プレイヤーが発する音楽圧そのものを受けとっているのであろうと思う。
だからプレイヤーが発揮する探究心や創造力、情熱、さらには彼らが張り巡らせている緊張感までをもそのまま受け取り、プレイヤーと一緒に音楽をやっているのである。
そうだ、そんな感覚が探検であり、受け身で聴くだけではない前のめりになって、コンサートに参加している感覚なのであろう。
これは彼らだからこその、独特の音楽圧を備えたミュージシャンのなせる業といえよう。
改めて思う。音楽もこういう表現方法があるのだ、と━
しかしこれは技法の問題ではなく、音楽そのものに、コンサートそのものに対してしっかりとしたコンセプトを持っているかということになるのだろう。
そのコンセプトに沿ってどうあるべきか、あるいはどうやろうかと考え、組み立てるのだと思う。
いずれにしても音楽の可能性と面白さを改めて思う。
これからの堀越 彰の世界が、大いに楽しみである。
※敬称は略させていただいています。
●『Swingin’ (2nd)~この素晴らしき世界 in 渋谷』(浦山隆男プロデュース)
期 日:12月6日(火)
open 18:30(ビュッフェスタイル食事スタート)
start 19:30 (2回、入れ替え無し)
場 所:渋谷シダックスビレッジ1F 東京メインダイニング(03-5428-5031)
チャージ:\5,500(Mチャージ+ビュッフェスタイル食事+1ドリンク)
予 約:東京メインダイニング tel.03-5428-5031
Swing Ace tel 03-6768-8772 fax 03-6768-8773 e-mail ticket@swingace.com
Wonder Jazzland e-mail wonder@jazzland.jp
●『鈴木直樹(cla) + 大橋高志(pf)デュオ』(浦山隆男プロデュース)
期 日:11月29日(火)
open 19:00 start 19:30~ 2回(入れ替えなし)
場 所:西荻窪「ミントンハウス」
予 約:ミントンハウス03-5370-4050
チャージ:\2,500(飲食別)
そこには彼の昨年末の『狂詩曲 rhapsody』(「衝撃のコンサート」)につづいての11月博品館公演『Quartier Latin』(カルチェ・ラタン)の、冒頭シーンのコンテ(設定・展開プラン)がビッシリと書いてあった。
前提の説明など何もなく、いきなりパリのカルチェラタンの片隅の酒場でのシーンの描写である。が、私は何の戸惑いもなく、彼のコンテに添ってそのドラマチックな世界に突入していった。
昔居た広告の世界の虫が動き出し、読みながら思わずカット割り(映像化する時のカメラの動きと、画面構成)をしていた。
しかしこれは私の昔の仕事柄、こういう形でのめりこんでいったわけではない。
11月9日、『Quartier Latin』公演の当日、私は前以て誘った、たまたま女性ばかりの友人8人と、博品館で落ち合った。
私は彼女らを誘うのにチラシを見せ、面白いから観にいってご覧!としか言わなかった。というより、そうとしか言いようがなかった。
冒頭シーンのコンテを垣間見せてはもらったが、それがどういう構成の元にどうステージにされるのか知る由もなく、また昨年公演の「狂詩曲 rhapsody」の説明をしながら堀越 彰の世界を説いても、私のコトバでは陳腐になりそうでとても彼の表現しようとした域にまでは届きそうにない。
だからチラシを見せて黙っていると、全員が行きたい!と即返してきた。

ラテンとヨーロッパが交錯するパリ、カルチェ・ラタンの片隅。
薄暗い酒場、喧騒の中でシャンソンを爪弾くギターリスト。
やがてそのギターはあたかも暗闇の中で目覚めた怪物か何かのように激しくなり、椅子代わりの箱を打ち鳴らすパーカッショニストとともに、もう一人のギターリストを呼び込み怒涛のような合奏となる‥
冒頭のメールの件同様、堀越 彰という男はあまり前以てくどくどと説明することを好まないのだろう。
いきなり我々の予測し得ない世界へ引きずり込んでいく。かなり暴力的にである。
しかし暴力的とはいえ、引きずり込まれた我々はすぐに納得させられるから並ではない。
納得させられるどころか、その先を恐々ながら探ってみたくなる冒険心を煽りながら次から次へと展開してくるから、昨年同様まったく休憩なしの1時間半が瞬く間に終わってしまった。
初めて堀越 彰の世界を体験した、私の知り合いの女性たちも芝居仕立てのトップシーンで度肝を抜かれたことだろう。
実は私は彼女たちを誘うのに、コンサートとは一言も言わなかったのである。
ステージ上に配されたミュージシャンが開演と同時に演奏し、MCが入って演奏が繰り返される。そして休憩が入り、2部が始まりやがてフィナーレになる━そういういわゆるコンサートとは一線を画すために、あえてコンサートとは言わなかったのである。
つまりいわゆる従来のコンサートという概念にはおよそ入らないと思ったからである。
かといってどういう概念の範疇のものであるかは、私の乏しい知識では思い当たるものがなかった。
というより、昨年の公演で「そうか、音楽もこういう表現方法があるのか!」と教えてもらったのである。
前述の女性たちも、コンサートとは言われていないまでにもいわゆるコンサート(音楽会)だと思い込んでいて、当然いつものコンサートの段取りでことは運ぶであろうと待ち構えていたはずである。
ところがさにあらず、いきなり芝居仕立てでステージは開いた。
そして次々とドラマチックに繰り広げられるラテンのリズムと歌、そして官能的な踊り(フラメンコ)。
初っ端の驚愕は即興味へと変わり、次にどんな音楽体験をさせてくれるのかと好奇心を呼び起こし、いつの間にかドキドキしながら前のめりになって堀越 彰の世界を探検していた。
そう、これはまさに探検である。異様ともいえるほどの高密度な空気の中を、我々は息を呑む思いを繰り返しながら次の演奏は、次の踊りはといつの間にか首を前に突き出すようにして進んでいった。
そんな高密度な空気を創り上げているのが、6人のプレイヤーである。
AMI鎌田厚子(Baile フラメンコ・ダンス)、堀越 彰(ドラムス、パーカッション)、石塚孝光(Cante フラメンコ歌手)、片桐勝彦(ギター)、林 正樹(ピアノ)、白土庸介(ギター、ベース)。
今書いていて気が付いたのだが‥普通コンサートと言うのは演奏する側がいて、聴く側がいる‥つまり我々聴く側は、演奏する側、つまりプレイヤーの演奏を待って味わい楽しむものである。
ところがこの『Quartier Latin』にしても、昨年の『狂詩曲 rhapsody』にしても、我々は聴く側にいる意識とは違う何かがある。
ちょっとオーバーに言えば、音楽が、踊りがステージから放たれた瞬間に我々聴(観)衆は共有してしまう━空中に放たれて、我々の眼に耳に届くまでの僅かな時間とはいえ多少なりとも減衰したものを鑑賞するのではなく、プレイヤーが発する音楽圧そのものを受けとっているのであろうと思う。
だからプレイヤーが発揮する探究心や創造力、情熱、さらには彼らが張り巡らせている緊張感までをもそのまま受け取り、プレイヤーと一緒に音楽をやっているのである。
そうだ、そんな感覚が探検であり、受け身で聴くだけではない前のめりになって、コンサートに参加している感覚なのであろう。
これは彼らだからこその、独特の音楽圧を備えたミュージシャンのなせる業といえよう。
改めて思う。音楽もこういう表現方法があるのだ、と━
しかしこれは技法の問題ではなく、音楽そのものに、コンサートそのものに対してしっかりとしたコンセプトを持っているかということになるのだろう。
そのコンセプトに沿ってどうあるべきか、あるいはどうやろうかと考え、組み立てるのだと思う。
いずれにしても音楽の可能性と面白さを改めて思う。
これからの堀越 彰の世界が、大いに楽しみである。
※敬称は略させていただいています。
●『Swingin’ (2nd)~この素晴らしき世界 in 渋谷』(浦山隆男プロデュース)
期 日:12月6日(火)
open 18:30(ビュッフェスタイル食事スタート)
start 19:30 (2回、入れ替え無し)
場 所:渋谷シダックスビレッジ1F 東京メインダイニング(03-5428-5031)
チャージ:\5,500(Mチャージ+ビュッフェスタイル食事+1ドリンク)
予 約:東京メインダイニング tel.03-5428-5031
Swing Ace tel 03-6768-8772 fax 03-6768-8773 e-mail ticket@swingace.com
Wonder Jazzland e-mail wonder@jazzland.jp
●『鈴木直樹(cla) + 大橋高志(pf)デュオ』(浦山隆男プロデュース)
期 日:11月29日(火)
open 19:00 start 19:30~ 2回(入れ替えなし)
場 所:西荻窪「ミントンハウス」
予 約:ミントンハウス03-5370-4050
チャージ:\2,500(飲食別)
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